people インタビュー

 

看護スタッフ 生駒千恵子さん

24時間つながるこの世界を、息子にも伝えたい。
メンバーさんとの笑顔の出会いが、家族の絆も深めてくれました。

「小さな子どもがいるから夜勤は難しいかな…」。そんな働くお母さんの悩みに、「全然平気でした!」と爽快な笑顔で答えてくれる女性に出会いました。「ライフゆう」の看護スタッフ・生駒千恵子さん。4歳の息子さんとの暮らしを楽しみながら、月に2~3回の夜勤を交えた週4日の勤務スタイルで働いています。
もともと看護師として病院に勤務していた生駒さんが、重症心身障害者の施設で働くようになったのは、「楽しんでもいいんだ!」という気付きがきっかけだったのだとか。メンバーさん、そしてご家族とともに人生を楽しむ生駒さんの笑顔のストーリーを、一緒にたどってみましょう。

プロフィール

生駒千恵子さん
生駒千恵子さん
千葉県出身。葉山への移住をきっかけにウィンドサーフィンの虜になり、夜勤で看護師をしながら日中は海へ出る生活スタイルを確立。長男出産後、心機一転でみなと舎の重心支援に携わることに。夜勤のやりがい・魅力が忘れられず、家族の理解を得ながら再開しています。

“夜勤専門”の看護師?

もともと千葉県出身の生駒さん。「ライフゆう」のある横須賀・逗子・葉山エリアには縁もゆかりもなかったそうですが、ウィンドサーフィン好きのご主人と出会ったことがきっかけで、結婚とともに葉山に移り住んで来ました。それとともに鎌倉の一般病院に勤めることになりましたが、その勤務スタイルは、“夜勤専門”だったのだとか。
インタビュー風景
「最初の2~3年は常勤でしたが、主人の影響でウィンドサーフィンにハマってしまって(笑)。月に10回ほど、夜勤専門の勤務をしていました。夜勤明けは、髪の毛をギュって縛って『鎌倉の海へ直行!』みたいな暮らしだったんですよ。」

“昼夜逆転”というより、昼夜問わず仕事に趣味に明け暮れる毎日。そんな生活に変化が訪れたのは、息子さんが産まれたとき。産休明け、日勤のみで働くうちに、「違うことがしたい」という気持ちが芽生え始めました。

「10年働いて、ある程度“やった感”があったんです。このまま働くか悩んでいたとき、重心(重度心身障害者の施設)で働いている知り合いの話を聞いて。『たこ焼き焼いた』とか、『お出かけした』とか、すごく楽しそうに話をしてくれました。 「楽しんでもいいんだ!」って思って。そういう人生もあるかな、と、思い切って飛び込んでみました。
」

「重度心身障害者の施設で働く」という看護師として大きな決断。このとき、息子さんは3歳。看護師14年目の春のことでした。

「これでいいんだ」という確信をくれた“笑顔”

「楽しそう」という直感を信じて飛び込んだ重心の世界。でも、自分で選んだ道とはいえ、最初はカルチャーショックにも似た感覚を味わったのだとか。

「やっぱり“生活の場”だったんですよね。メンバーさんは病気を持っているけど、それが当たり前で普通に生活しているので、『これも看護師の仕事なの?』と思うことが、結構あって。」

白衣ではなくジャージを着て、支援スタッフと同じように、時にはメンバーさんの外出に付き添ったり、イベントの準備をしたり。“新しい世界“を受け入れるまでには、葛藤があったと言います。でもそれを乗り越え、「これでいいんだ」と思えたのは、そこに“笑顔”があったから。
支援風景
「メンバーさんもスタッフも、みんな笑ってるんです。ごはんを食べるときも、イベントのときも、必ず誰かが笑っていて。『この世界にいたいな』と思いました。今思うと、病院のときは、患者さんにすごく気を使っていたのかもしれませんね。でも、ここではメンバーさんにも冗談が言えてしまうような、楽さがあって。気を使わなすぎて申し訳ないくらい(笑)、楽しませてもらっています。」

夜を越えて、つながる仕事

重心施設で1年弱の勤務の後、次の職場として、自宅により近い「ライフゆう」を選んだ生駒さん。息子さんが4歳になったことを機に、夜勤を再開する決断をしました。

「夜の状態を知りたい、と思ったんです。日勤だけでは、メンバーさんの24時間の動きがわからなくて、中途半端な感じがしていて。『ライフゆう』は、家が近いという安心感もあったので、思い切って始めてみました。」
16時~翌朝9時半という長時間勤務の上、少人数のため雑務も多く、緊張感も伴う夜勤。月に2~3回とはいえ、妊娠出産期のブランクがあった生駒さんにとっては、体力的にも精神的にも負担が大きかったはず。
でもこの決断は、その後の仕事に、何事にも代え難い価値をもたらしてくれました。
薬出しと注入セットをしている様子
「夜騒いじゃう人や、よく寝ている人、それぞれの夜の状態を知ることで、日勤のとき、『だからこんなに眠そうなんだな』って、自分の頭の中で描けるようになりました。『夜勤の方が困らないように、昼間のうちに解決しておこう』と、これまでできなかった小さな気配りができるようになりましたし、考え方がつながった気がします。」

寝て、起きて、ここはまさに、暮らしの場。メンバーさんにとっての“家”です。「夜勤をやって、もっとメンバーさんと近づけた」と笑顔で語る生駒さんは、看護師としてだけではなく、ひとりの母親としても、新たな気付きを得たようです。

「私も母親なので、『メンバーさんは家族と離れて不安だったんだろうな』と思うんですけど、意外とすぐに、しっかりと自分の世界を築けたりするようです。親が思うより、子どもは強かったりします。ご家族の事情はそれぞれですが、施設に入所するというのは、一人ひとりの自立につながっていきますよね。面会で家族の時間も持てますし、長い目で見ると、家でずっと過ごすより、お互いにとっていいことなのかな、と思います。」

「ママ夜勤行くよ」に、ニヤッ?

「親が思うより、子どもは強い」。この気付きは、息子さんに対しても同じだったと生駒さんは語ります。

夜勤を再開して約半年。小さな息子さんとの暮らしの中で不安を抱えながらのスタートでしたが、旦那さんの協力も得られ、今では家族の暮らしのペースも整ってきました。そして、旦那さんと息子さんは、“男同士の時間”を楽しむようにもなったのだとか。
「最初は『泣いちゃったらどうしよう……』って思ったんですけど、全然平気でした。今では『ママ夜勤行くよ』って言うと、ふたりでニヤッ(笑)って。たぶん、夜勤の夜はふたりだけの内緒の楽しみがあるんだと思います。 息子とパパの関係が深まっているんだろうな、と思いますし、家族の形としても、ときどき離れるくらいのほうがちょうどいいのかもしれません。」

「これからもこの仕事を続けていきたい」と言う生駒さん。メンバーさんたちとの出会いから、息子さんへ伝えたいメッセージも生まれたようです。
メンバーさんと田中さん
「『ママはこういうところで働いているんだよ』と伝えていきたいですし、息子にも、ここに来てメンバーさんたちと接してほしいな、と思います。この前も、コンサート会場で小さい子が怖い顔をしてメンバーさんをみていたという話を聞いたんですが、知らないと確かにびっくりしますよね。『こういう人がいて当たり前』っていう感覚を身につけてほしいな、と思っています。」

「お互い楽しみましょうね」という気持ちで

親御さんに代わり、メンバーさんの暮らしを支える「ライフゆう」の仕事。「責任はすごく感じるけど、気負っていない」と話す生駒さんは、これまでの人生を楽しんできた姿勢そのままに、今の仕事を存分に楽しんでいます。

「『何かあってはいけないな』と思う一方、『お互い楽しみましょうね』という気持ちでやっています。楽しめるのは、やっぱりメンバーさんがよく笑ってくれるから。私も自然に、笑顔になっちゃうんですよね。」

ひとりの母親として、看護師として。昼も夜も「暮らし」に向き合う生駒さんの人生のストーリーは、これからもメンバーさんの笑顔とともに、続いていくことでしょう。
メンバーさんと生駒さん

(2015年取材)

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