people インタビュー

ライフゆうで暮らす 飯干朝菜さん

ハワイアンのリズムに身を任せて。
今、ここにある私の暮らし。

ハワイアン音楽の流れる部屋で、アロハ柄のTシャツに身を包み、穏やかな表情でくつろぐキリリとした瞳が印象的な女性。彼女が、飯干朝菜さんです。
ここでは、『ライフゆう』で暮らす朝菜さんの、1日の暮らしの様子を紹介します。夏の終わりを感じるある日、その日常の風景から、朝菜さんの目に映る景色や揺れる想いを感じてみてください。

プロフィール

飯干朝菜さん
飯干朝菜さん
『ライフゆう』で過ごすメンバーさんのひとり。生後6ヶ月でヘルペスに感染し、重症心身障害児となる。養護学校卒業後、作業所『こどものへや』を経て18歳から『みなと舎』の通所施設『ゆう』へ通い、2014年6月に『ライフゆう』へ入所。現在35歳。

1日の始まりはスキンケアから

「朝菜さん、おはようございます」。朝7時半、看護スタッフの呼びかける声で朝菜さんはパチリと目を開けました。昨夜から約9時間、ぐっすり眠ったせいか寝起きは良く、表情も穏やか。同じ『ハープ』の部屋で過ごす4名の方々とも挨拶を交わし、清々しい1日の幕開けです。
朝一番の日課は、スキンケア。顔をきれいに拭いた後は、化粧水をつけてお肌を整えます。そして欠かせないのが、痰の吸引。人工呼吸器を付けている朝菜さんにとって、痰ががらんでしまうことは日常のことでありながら、放っておけない症状です。優しく目を見て話しかけながら、慣れた手つきで丁寧に処置をする看護スタッフの姿に、朝菜さんは安心した表情を見せていました。
8時になると、朝菜さんの部屋に美味しそうな匂いが漂ってきました。お待ちかねの朝食の時間です。白い食器に映える色とりどりのメニューは、お粥もおかずも、全てペースト状。口から食事を摂ることができず、胃に直接注入する朝菜さんのために特別に仕立てられた食事です。食べるのが大好きな朝菜さん。ニコニコしながら約30分かけて食事を終え、歯磨き、着替えを済ませたら、ホッと一息。今日は週3回の入浴も、通所施設『ゆう』へのお出かけも予定されていないので、ベッドに横たわり、ゆったりとした時間を過ごします。
飯干朝菜さん

家族との時間を大切に

「おはよう、朝菜。少し涼しくなったね」。聞き慣れた声を耳にし、うれしそうに瞬きをする朝菜さんの視線の先に映るのは、お母様の飯干美智代さん。毎日のように朝菜さんのもとを訪れるお母様、「今日は少し眠そうね」と、朝菜さんといつものように、目で会話を始めました。朝菜さんはお母様の語りかけに、瞬きで答えるのだとか。お母様の元気そうな顔を見られて、朝菜さんもとても安心した様子です。

お昼前になると、看護スタッフが朝菜さんの元にやってきました。排痰を促す処置「パーカッション」の時間です。これは、12月に気管切開の手術を受けた朝菜さんにとって、欠かせない日課。「それまでは吸引だけだったのですが、この処置をすることによって、随分楽になりました」。お母様はそう言うと、穏やかな、でも真剣な眼差しで、パーカッションを用いて呼吸ケアを行う朝菜さんの様子を見つめました。
看護師さんから昼食をいただく様子
12時半、お楽しみのランチタイムです。少し気分を変えて、車椅子に乗って部屋の前の廊下で、仲間と一緒に昼食を楽しみます。今日のメニューは、鮭の西京焼、カリフラワーとキュウリのレモン和え、おすまし、お粥。お母様が口元まで運んでくれた食器から漂う匂いを嗅いで、朝菜さんはニンマリと、うれしそうな表情。お母様と話をしながらのランチタイムは、朝菜さんにとって、毎日の楽しみになっているようです。

ハワイアンで仲間とコミュニケーション

食後、歯磨きを済ませて部屋に戻ると、お母様は箱から、新しいCDラジカセを取り出しました。なんでも、古いラジカセが壊れてしまったので、お父様と一緒に選び、新調されたのだとか。「朝菜はハワイが大好きなので、ハワイアンをかけているんですよ」。お母様はそう言うと、ラジカセのスイッチをオン。スローテンポのハワイアンミュージックが流れ、朝菜さんはニコニコとうれしそうにお母様の方に目を向けていました。朝菜さんは、これまで4回もハワイに行くほどのハワイ好き。このハワイアンミュージックは、朝菜さんと同室のメンバーさんもお気に入りなのだとか。ゆったりとしたメロディが、仲間とのコミュニケーションをつないでくれているようです。

昼下がり、フロアで仲間とのおしゃべりを楽しんで部屋に戻ると、今度は『ライフゆう』の担当医が朝菜さんの元へやってきました。今日は、2週間に1度のカニューレ交換の日。朝菜さんの呼吸を助ける器具「カニューレ」を新しく取り替える、大事な処置です。「朝菜さん、呼吸も安定してきましたね」。穏やかな表情で語りかけながら処置をする先生に答えるように瞬きをする朝菜さん。この日は2時間ほど呼吸器を外しても体調が安定していて、心も身体も絶好調な様子です。みんなに囲まれて表情も豊かに過ごす毎日が、朝菜さんの体調にもいい影響を与えているのかもしれません。
夕方、お母様がご自宅に戻られる前は、朝菜さんにとっての特別な時間。ニキビができやすい朝菜さんのために、お母様がお得意のスキンケアをしてくれるのです。顔を拭いて、化粧水をつけて、ときにはニキビ予防のためにパックもします。この日も、ケアの後はさっぱり、すっきりとした表情に。ツルツルのお肌に満足そうな様子で、お母様を見送ることができました。
ベッド脇に貼ってある顔パック中の朝菜さんのお写真

続いていく、いつもの暮らし

外出もなく、特別なイベントもない1日でしたが、にぎやかな『ライフゆう』にいると、あっという間。18時半には夕食を摂り、朝菜さんは自分のベッドへ。夜勤の看護師さんと会話したり、妹さんが飾ってくれたお気に入りのモビールを眺めたりしながら夜の時間を過ごし、22時にはスヤスヤと眠りにつきました。夜中、看護スタッフが痰の吸引に訪れてもほとんど目を覚ますことがないという朝菜さん。今日はどんな夢を見ているのでしょうか。

静かな夜を越え、朝日が昇る頃には、またにぎやかな『ライフゆう』が戻って来ます。そして朝菜さんの毎日の暮らしは、こうして、今日も続いているのです
飯干朝菜さんとお母様

(2015年取材)

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